Solid Quantum Sensors 固体量子センサ
NV center
窒素-空孔(NV)センター
窒素-空孔(NV)センターは、ダイヤモンド中に形成される窒素(N)と空孔(V)からなる格子欠陥です。これは室温大気圧下においても量子状態を保てる系であり、スピン状態に依存した蛍光を示します。
磁場、電界、さらに温度によるエネルギーレベルの変化を蛍光として読み出すことで高感度センサとして機能します。
NVセンターの個数を制御することで、細胞や分子などのナノスケールな対象から生体磁場などのマクロな対象まで様々な分野への応用が期待されています。
Ultrahigh sensitivity quantum magnetic sensor
超高感度量子磁気センサ
NVセンターは、磁場の強度により量子状態の共鳴周波数が変化する性質(ゼーマン効果)を持っており、その性質を用いて磁気検出を行います。
磁気検出に寄与するNVセンターの数が多いほど磁気感度が向上するため、高密度なNVセンターを用いることで、室温において医療応用に必要とされるフェムトテスラレベルの感度の実現が期待できます。
当研究室では、高感度NVアンサンブル材料の構築、マイクロ波回路の製作、ノイズキャンセルシステムの導入などによる超高感度磁気センサの実現を目標としています。
NVアンサンブルの形成には化学気相成長(CVD)法を用いています。
NVセンターはダイヤモンド格子内に形成されるため、4つの軸方向を持ちます。
CVDを利用することで、NVセンターの軸方向を完全に1方向に制御することができ、磁気検出感度を向上させることができます。
当研究室では、高密度かつ完全に1方向に配向したNVセンター薄膜の形成に成功しており、超高感度磁気センサへの適用に向け研究を進めています。
Quantum sensor for biomagnetism
生体磁気量子センサ
ダイヤモンド量子センサは生体応用へ期待されています。脳磁図(MEG)の測定において、ダイヤモンド量子センサを使うことで装置の小型化と低価格化を実現できる可能性があります。ダイヤモンド量子センサのMEG応用へ向けて、我々はNVセンタを用いたMEC測定方法の確立と磁場感度の向上に取り組んでいます。
NVセンタを用いたMEG測定は世界初の試みです。我々は、脳磁(~fT)より大きい磁場である心磁(pT~nT)の測定に成功しました。MEG測定を実現するためには、さらに多くの工学的チャレンジが存在します。ダイヤモンドセンサの構造、レーザー照射手法、蛍光検出手法等、実装面で最重要な課題を解決します。
磁場感度を向上するための手法として、我々は高度な量子操作をNVセンタ中の電子スピンへ適用します。電子スピンとフォトンの微視的な振る舞いを理解することで、適切な量子操作を構築できます。この技術によって磁場感度を量子測定限界まで向上できると見込んでいます。
Integration EV battery monitor
集積化、電気自動車の電池モニタ
ダイヤモンド量子センサは電気自動車を支える存在として期待されています。室温で動作するダイヤモンド量子センサは、車内でも高感度磁場測定が可能です。ダイヤモンド量子センサを用いた高感度磁場測定は、電気自動車のバッテリー使用量の高精度な観測を可能にし、自動車の走行可能距離を延長させます。我々は、車載ダイヤモンド量子センサを実現するため、センサシステムの小型化と車内環境での高感度化の研究をしています。
センサシステムは最終的にはオンチップ化を目指しています。従来のNVセンタ測定から車載センサとして必要な機能のみを抽出することで、システムの小型化に取り組んでいます。さらにマイクロ波回路やデジタル処理部分の集積回路を設計することで、オンチップのダイヤモンド量子センサを実現します。
車内において必要とされるセンサの小型化や低消費電力化は、センサの感度を制限する要因となります。我々は集光効率の向上と高度な量子測定の導入によって、車載センサの高感度化を図っています。
Nanoscale sensing of condensed matter physics
ナノスケール物性センサ
ダイヤモンド量子センサの価値を高めるためには、新たな応用分野を切り開くことが重要です。そこで我々は、物性物理学の分野とNVセンタによるセンシングの融合領域の研究に着目しました。具体的には、歪に敏感な磁性材料である磁歪材料とNVセンタを組み合わせたハイブリッド重要イメージングのテーマを研究対象としています。
これは、磁歪材料の重量を磁場に変換する性能と、NVセンターによる高感度磁場イメージングに着目したテーマです。細胞等の微小な重量のイメージングの実現が期待されます。
Device quantum sensing
デバイス量子センシング
ワイドギャップ半導体は次世代低損失パワーエレクトロニクスを構築する材料として期待されています。
パワーデバイスは高電圧および高温状態で動作することが求められますが、これまでデバイス内部の局所的な電界および温度を計測することは困難でした。
本研究では、NVセンターを利用することでデバイス内部の物理量をナノスケールでセンシングする技術を開発しています。
Heteroepitaxial diamond growth
ヘテロエピタキシャル結晶成長
量子センサおよびパワーデバイスに用いられる単結晶ダイヤモンド基板は、高温高圧合成法または化学気相合成(CVD)法を利用して作製されていますが、その基板サイズは数ミリ角程度に留まっています。
ダイヤモンドセンサ・電子デバイスの実用化のためには、ダイヤモンドを大面積合成する技術が必要不可欠であり、本研究室では、シリコン基板上でのヘテロエピタキシャル成長を行っています。
量子センサおよびパワーデバイスに用いられる単結晶ダイヤモンド基板は、高温高圧合成法または化学気相合成(CVD)法を利用して作製されていますが、その基板サイズは数ミリ角程度に留まっています。
ダイヤモンドセンサ・電子デバイスの実用化のためには、ダイヤモンドを大面積合成する技術が必要不可欠であり、本研究室では、シリコン基板上でのヘテロエピタキシャル成長を行っています。
3C-SiC/Si基板上において、独自に開発した高密度マイクロ波プラズマCVD装置を用いて高配向ダイヤモンド薄膜を作製しています。
3C-SiC/Si(001)面方位において高品質なダイヤモンド薄膜を合成でき、3C-SiC/Si(111)基板上では世界で初めて高配向薄膜を得ることに成功しています。
得られた薄膜上で量子センサおよびパワーデバイスを作製しており、ヘテロエピタキシャルダイヤモンド薄膜の有用性を実証するための研究を推進しています。