研究概要

ダイヤモンド中のスピンを用いた「ダイヤモンドセンサ(超高感度量子磁気センサ)」

ダイヤモンドは、構造を少し変えることで、「宝石」から「量子センサ」に変えることができます。

ダイヤモンドは炭素原子からできています。 1つの炭素を取り除いて窒素(Nitrogen)で置換し、空孔(Vacancy)と組み合わせれば、電子の特別な状態を実現することができます。その電子のスピン特性は磁場の影響を受けます。

私たちはこの電子スピンの量子力学的性質を利用し、ダイヤモンドを用いた「高感度量子磁気センサ」の研究を行っています。この量子操作によって得られるセンサは、脳のニューロン活動がおこす磁場の感知を可能にすることができます。

具体的な活用例:
「高感度量子磁気センサ」がMEG(脳磁図) / MRIの小型化を可能にする

MEGをSQUID(超伝導量子干渉計)で計測する際の課題

認知症はMEG(脳磁図)を用いて診断することができます。現在、MEGはSQUIDと呼ばれる超高感度な磁気センサを用いて測定を行うことが一般的ですが、その装置は左の写真のようにとても大きく、また動作させるには極低温が必要です。そしてシステムはなんと3億円以上ととても高価です。

私たちの提案「ダイヤモンド中のスピンを用いた超高感度量子磁気センサ」

それに対し、私達の「超高感度量子磁気センサ」は「SQUID」のように極低温を要求せず、室温でも敏感です。
これにより、装置の小型化、低価格化が実現できます。

研究概要

「ダイヤモンドセンサ」の可能性

ダイヤモンドセンサの性能とターゲット

「ダイヤモンドセンサ」は、DNA・タンパク質・細胞・心臓/脳の活動のような今までのセンサでは計測が困難であった分野においても、スケーラブルなアプリケーションの可能性を秘めています。

また、ナノスケールの世界のみならず、マイクロスケールの分野にも適用できる幅広い空間分解能を実現する可能性を持っています。ホール素子などの他のセンサより幅広い領域をカバーしているため、さまざまな応用が期待できます。

さらにIoTよりもさらに微細な分野をインターネットに繋げられる“Internet of Nanothings”の可能性も秘めています。

具体的な可能性1:
MEG IoT スーパーコンピューティング

近い将来にはダイヤモンドセンサが脳の大規模な活動を解明する手助けとなるでしょう。スーパーコンピュータと組み合わせた大規模なデータ分析でリアルタイムイメージングを実現します。

具体的な可能性2:
IoT /スーパーコンピューティングを必要とする分野

ライフサイエンス

近年ではAI技術などの隆盛に伴い、運転者の監視・支援といった自動運転技術が急速に進歩しています。ダイヤモンドセンサの応用例の一つとして、運転者にダイヤモンドセンサを使用することで、眠気を感じている運転手に警告するといった非侵襲な監視システムが可能になります。

医療

私たちの提案する医療用途の1つはリンパ節に広がる乳がんの検出です。現在、乳がんは外科的に検査されています。私たちはダイヤモンドセンサを用いた非侵襲な検査方法を開発しています。

私たちの挑戦

この技術を社会問題解決へ応用

ダイヤモンドセンサは、”Internet of Nanothings”時代におけるナノセンサの候補となります。このセンサは、ポータブル、安価、非侵襲的、そして室温でのデータを収集することができます。

私たちは、この技術を地球上でどのように社会に貢献できるかを考えています。