ダイヤモンド磁気センサー

NVセンターを用いた磁場の高感度計測

NVセンターとは、ダイヤモンド中の隣り合った炭素原子が窒素(N)と空孔(V)に置き換わったもので(図1)、高感度な磁気センサ・電界センサや量子ビットなど幅広い応用が期待されています。特に室温で動作可能であるという点に注目が集まっており、世界的に活発な研究が行われています。現在、脳磁場などの微弱な磁場を測定する場合にはSQUIDが用いられています。SQUIDは非常に高感度な測定が可能ですが、動作には-269℃という極低温が必要です。これに対しNVセンターによる磁気センサでは室温でSQUIDに匹敵する高感度測定が可能なため、広範囲な応用が期待できます(図2)。

本研究室では細胞の磁気イメージング、心磁・脳磁計測、nano-NMR等を目標として研究を行っています。

Structure of NV center
図1. NVセンターの構造
Applications of the sensor
図2. ダイヤモンドセンサの性能と応用


NVセンターを用いた磁場のベクトルイメージング

 NVセンターは隣り合った2個の原子が置き換わることで形成されるため、ダイヤモンドの結晶中で8つの方向をとることができ、サイズが小さいため高密度に形成することが可能です。それぞれの方向について測定し、その結果から計算することで、磁場の強度と方向を同時に測定することができます。また、従来の磁気センサ(ホール素子、SQUID等)では素子の微細化に限界があるため空間分解能が数百ミクロン程度に制限されますが、NVセンタによる磁気センサでは光を用いて測定するため顕微鏡スケール(300nm程度)の高い空間分解能が得られます。 以上の特徴から、これまでできなかった細胞磁場の計測などが可能になると考えられています。本研究室では、細胞内磁場構造の計測に向けネオジム磁石の微粒子(直径2μm)が発する磁場の可視化を行いました(図3)。

B vector measurement result
図3. ネオジム微粒子による磁場のベクトル測定


窒素ドープダイヤモンド合成によるNVセンターの磁気感度向上

 NVセンターの磁気感度向上には、高密度かつ特定方向へ配向軸制御されたNVセンターの形成が必要です。単一をはじめとする低密度のNVセンターにおいては、(111)ダイヤモンド基板上にマイクロ波プラズマ気相成長法によりダイヤモンド薄膜を合成することでNVセンターが1方向に配向することが知られています。本研究室では(111)基板上に窒素ドープダイヤモンド薄膜を成長させることで、高配向な高密度NVセンターの形成を行っています。この技術により、NVセンターの磁気感度向上を目指しています。

Light emission from NV
図4. (左)窒素ドープダイヤモンド中のNVセンターからの蛍光
(右)高配向NVセンターのODMRスペクトル


IV族半導体中の欠陥に関する第一原理計算

 ダイヤモンド中のNVセンターは、優れたスピン特性を持ち、スピン情報デバイスへの応用が期待されています。そこで、ダイヤモンド中の他のカラーセンターについても、どのようなスピンの特性を持つか、第一原理計算ソフトを使って調査しています。第一原理計算は、量子力学のシュレディンガー方程式を数値的に解くもので、欠陥のエネルギーレベルや波動関数、ZPL等を求めることができます。 これまでに、ボロンがダイヤモンドのp型ドーパントとして用いられているので、BV (boron-Vacancy) センター(図5)に注目し、そのエネルギーレベルを明らかにしました。(図6)

Structure of BV center
図5. BVセンターの構造
Energy level diaglam
図6. BV-センターのエネルギーレベル図